フランシスコ教皇と南北首脳会談

 

 先月4月27日(金)に板門店で開催された韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による南北首脳会談は日本でも大きく報道されたましたが、懐疑的、批判的なものが多かったように思います。日本の報道と違って、韓国はもちろん、欧米でもこの会談を歴史的で画期的な出来事として評価していました。

 

 バチカン放送もフランシスコ教皇の深い関心と期待を伝えていました。その中で、25日のバチカンでの正午の祈りで、教皇は平和を熱望する朝鮮半島の人々に、ご自身の祈りと、カトリック教会全体の精神的一致を約束されました。そして、「人々の出会いと友好を目指し、より良い未来を築くあらゆる有益で誠実な取り組みを支え励まし、」広場に集まった信者と共に『主の祈り』を唱えられ、「韓国と北朝鮮による南北首脳会談の前向きな成果を、祈りをもって見守りたい」と述べられました。また、4月30日の昼に祈りでは、教皇は、この会談において、「朝鮮半島の非核化のための誠実な対話実現に向け、双方の指導者が負った責任を勇気あるもの」と述べられ、「平和と兄弟愛に満ちた未来への希望が失望させられることがないよう、この協力が続けられ、朝鮮半島の愛する人々と全世界に善の実がもたらされるように」と祈られた。

 

 フランシスコ教皇は、2014年に教皇として25年ぶりに韓国を訪れ、南北の和解を呼びかけられましたが、実はこの年の12月17日に、アメリカのオバマ大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長は国交正常化交渉の開始を電撃発表し、数か月以内に大使館を開設し、銀行や通商関係の正常化を話し合うことでも合意しています。その時、教皇が両首脳に送った手紙が問題解決に決定的に寄与したと言われています。

 

 こういう背景の中で、カトリック信者である文在寅氏は選挙中から、北朝鮮に対して、「太陽政策の継承と発展」を公約として掲げて昨年2017年5月9日大統領に当選しましたが、同月23日には教皇に対し、南北首脳会談の仲裁を要請しています。フランシスコ教皇は当時バチカンに戻る飛行機で記者らに対し、「北朝鮮の問題は核兵器による大量破壊の懸念まで強まった」とし「この問題は外交的解決法と交渉を通じて解決するべきであり、世界には多くの協力者がいる」と述べられています。(韓国・中央日報社)

 

 今、教会は主の復活節を祝い、まもなく聖霊降臨祭を迎えます。弟子たちが人々を恐れて部屋に閉じこもっていた時、復活された主は彼らの真ん中に現れ「あなたたちに平和があるように」と福音のメッセージを伝えられました。フランシスコ教皇も南北両首脳の勇気ある決断をたたえ、「朝鮮半島の愛する人々と全世界に善の実がもたらされるように」と祈られました。聖パウロはガラテヤ書で、「御霊の実は、愛、喜び、平安、寛容、親切、善意、誠実、柔和、自制です。このようなものを禁ずる律法はありません。」と言っています。(5:22-23)聖母月に入ったこの5月、新たな心で聖霊降臨の恵みが与えられるように聖母と共に祈りましょう。